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第3回合評会

1日目

1. 五月の同行:イコ

合評:しろくま、イコ、甲斐、あんな、緑川、小野寺、る

 

1.1 ストーリーについて
甲斐:背景描写のスケッチという印象でストーリーがない
緑川:そもそもイオンに何をしに行ったか分からない
イコ:甲斐さんが「ストーリーを盛り込むべき?」と言っていたが他の人はどうか
 ←小野寺:必要ない
 ←緑川:会話をさせたい

 

1.2 同行者は何者か

あんな、甲斐、緑川:同行者が人間ではないようだ。会話もかみあっていない
小野寺:同行者はもう一人の作者のよう。芸術的なものを模索している
あんな:宇宙という単語や光の描写が、何か関連しているのかと思った。同行者の語っている内容が、何かしら目の前にあるもの以外の現実に対する描写ではないか
小野寺:同行者は元の恋人の亡霊のようだ
甲斐:語り手の視点から考えると、自分対その他、という風に世界が二つに区切られていて、主人公はあくまで自分の中から出ないで自分以外の世界を見ている

 

1.3 表現について
あんな:何を表現しているのか掴みきれない。比喩や描写を羅列しているが終着点がない
緑川:内容にあってないのではないか。そこまで凝った表現が必要なのかどうか
甲斐:画が飛んでしまう。イメージがつながらない。表現は追及していいと思うがメリハリがない
小野寺:比喩的表現が多すぎて何に重点を置けばいいかわからない
る:小説全体を通して感情移入出来る場面が余りにも狭すぎて、途中で読むのを辞めてしまいたくなった。『大宇宙の直上から絶え間なく降り注ぐ光が、自動車の外殻にぶつかって、粘膜のように車体をすっぽり包み込む。』この表現からもう、読ませる気はないなと感じた。細部には確かにうまい比喩が盛り込まれているけど、ストーリーライン全体がもはやなにかの象徴、自分とは全く関係ないものにしか思えないので、無かったことにして素通りしたい作品だ
イコ:小野寺さんは分かりやすかったと言っていたが
 ←小野寺:同行者の言葉とイオンに行ったということだけなら。比喩に意味があると言われると分からない
 ←甲斐:分かりやすさをほんの少しでも加えればこの作品は変わると思う
甲斐:語り手が思わずこぼした本音を読みたい。内面を出していないので

 

1.4 最後同行者の輪郭が解けることについて
緑川:薄暗がりで輪郭がぼやけてきているのを誇張した表現ではないか
あんな:不可解な出来事も連続する比喩も、積み重なって何かになると思うと読める

 

2. スイッチ:甲斐 寛樹

合評:しろくま、イコ、甲斐、あんな、緑川、小野寺、る

 

2.1 最後「彼は自分が何のスイッチを押したのか、まったく分かっていない」について
しろくま、緑川:分からない
あんな、る:男女の仲のわからなさの表現では
イコ:思考に溺れて女を見てない男を表現している
緑川、イコ:答えを言われてもすっきりしない、興ざめ

あんな:スイッチという劇的な変化の象徴をテーマにし、劇的な変化が男女間では通用しないことを表したかったのでは。人間関係はスイッチのように単純ではない
 ←しろくま:男の短絡さがテーマなのか 

 

2.2 導入部について
る:読ませる気があるのか
 ←小野寺:こういう語り口の男はいるのでは
  ←る:ありがち、ということ
る:甲斐さんが想定している読者が違う。より軽い文章を好む読者向けに書かれたのでは
緑川:導入からの説明が長い
る、イコ:スイッチについて、もっと悩みこんでいく様子を描いてほしかった
イコ:スイッチを押すことで劇的な変化になるのか、それともゆっくりとした変化が起きるのか、そこでまず悩んでほしい
 ←しろくま:そういう深さを元々求めていない作品なのでは

 

2.3 話の流れについて
しろくま:スイッチの説明をして、彼女の首にそれを見つけるという流れは、一般的な流れであり、別に悪くもないのでは
 ←緑川:あまりに既定路線なのではと思う
 ←イコ:一般的な話の流れ=悪くない、というとは異を唱えたい。逸脱したもの、突拍子もないものに惹かれると思う

 

2.4 どうすればより洗練された作品になったか
イコ:作者が、読者の誰よりもまずスイッチについて考え抜いたという痕跡がないということが洗練されていない一番の問題だと思います
る:「吾輩はスイッチである」から始まる。主人公にパラノイアックな傾向を持たせるのはありだと思います
緑川:いっそ、主人公をスイッチマニアにして、スイッチを押すことに快楽を感じるタイプにする。そして身近な女性にスイッチがついてることに気づいて慌てる
あんな:作者にこれ!絶対!ていう意志みたいなものが必要なのでは

 

2.5 甲斐さんの「対象とした読者」について
甲斐:イベントの原稿を書いていた意識からの継続で、中学生から老人まで内容が分かるようにという意識があった
 ←る:純文学は中学生にわかられてたまるかというものがあるから
 ←あんな:改行が多かったのはイベントの影響のよう。脚本のような印象を覚えた
 ←イコ:読者に寄り添おうとする姿勢は見習いたい

 

2日目

3. しろくま:リセット

合評:しろくま、常磐 誠、小野寺 那仁、神崎 裕子、緑川、イコ、あんな

 

3.1 リセットというシステムについて

イコ:説得力はあった。半端なSF小説のようにしなかったのが説得力に繋がったと思う。一年だけというのが地味

小野寺:説得力はあったと思う。また病気などの比喩のようだった

常磐:リセットのきっかけを思い出せないのはなぜか

緑川:工夫など意見はないか

 ←神崎:不自然と言えば、冬眠というシステムを使っている以上身体面のことがあまり書かれていないことが不自然

 ←緑川:読んでいるときはそこに疑問を持って突っ込もうという気がしなかった

 ←常磐:同じように疑問など意識しなかった。

  ←緑川:作者自身そういったことは考えていなかったのでは

 

3.2 リセット制度が作品の中心ではなく心情が中心にある

小野寺:リセットの内容には深い説明が書かれていないが、それは作品としてありだと思う。各人の想像に任せているようだ。そして文章がリアリズムのようなのでSFとは思えない

イコ:同じように想像に任せていると思う。こういうのは曖昧なほうがよい。リセットという制度を問題にしようとしてるのではない

常磐:リセットというタイトルでも、作品の中心にあるのはリセット制度ではない。それを使った僕、使ってない周囲、使った自分に気づくことができない世界。そういった僕の気持ち、心情が中心にあるのだと思う

 ←イコ:選択した人間と、選択しない人間の差異

 ←小野寺:罪意識みたいなものだろうか

常磐:後ろめたくは感じているようだ

イコ:社会に対して同化できないことを責められる気持ちがあり、それを避けるためにかれは働く。しかし親戚の人間は僕を同化していない人間とは見ていない。それはまゆちゃんへの親戚への考え方とつながってくる

 

3.3 描写について

あんな:差異の部分にもう少し心理描写があったほうがよかったのではないか

 ←小野寺、神崎:賛成

緑川:静的な感じは作者の持ち味でもあるようだ

神崎:主人公にとってはリセットをしたことは重要なことのはず。しかし周りはなにも変わらずに接している

 ←あんな:そこに葛藤があると思う

 ←常磐:母がぼかして伝えていたために、主人公がリセットしたことが知られていなかったことと繋がるのでは

 ←あんな:無職だって知ってても言ってこない、話題に出さない。親戚で集まるとそういう雰囲気がある

 

3.4 親戚について

常磐、イコ:ひとちゃんは知らなかったが、ほかの親戚は知っていたという可能性があるのではないか

イコ:親戚がリセットを話題にしないことを、主人公は肯定的にとらえている。自分だったら周りに気を使わせたくないのでこういう場に参加できない

 ←あんな:この主人公は心臓が強そうだ

 ←常磐:自分なら引き籠りそうだ。主人公もその可能性を危惧していたが

イコ:相手が気を使っていることを、人に頼られるというように、解釈できるのはこの作者の長所でもあり短所でもある。性善説に立っていると感じる

 ←常磐、イコ、緑川:作品自体が温かく、緩やかであるように感じる

 

3.5 作品が重い

あんな:淡々とした印象を受けた

 ←小野寺:その淡々とした印象がかえって不気味に感じて滅入る。やる気が起きない。何かしなければいけないのに何もしないまま過ぎていくときの気持ちのリズムが、この淡々さと合っている。文章がその深刻さを裏打ちしている

神崎:倦怠感がある

 ←あんな:16ページ「人に自分を確認してもらいたくなった」という状態がその倦怠感なのだろう

 

3.6 まゆちゃんについて

小野寺:「まゆちゃん」への印象が薄い

 ←イコ:まゆちゃんの四十九日なのに確かにまゆちゃんの印象が薄い。主人公が働いている様子の描かれているのが特にそう思わせる

 ←神崎:儀礼的にやっているようだ

 ←小野寺:そして、そうやって役立つことで少し気が晴れたということに、また重い気持ちにさせられる

神崎:まゆちゃんの死が主人公が回復するための道具になっていた

 ←あんな、常磐:道具とは思わなかった

 ←小野寺:道具というより転機に思う

イコ:重い話として認識していくと、作者の底意地の悪さを感じさせる

神崎:いいことかどうかは分からないが底知れなさがある

常磐:まゆちゃんが知恵遅れである必然性は感じなかった。まゆちゃんについて書かれたことの薄さと、必要性を感じさせない濃い設定は違和感を覚える

 ←緑川:小学1,2年生のころの記憶しかないので、濃く書くのは難しいのでは

  ←イコ、小野寺:そう考えると納得できる。自分はまゆちゃんについて書き込みの薄さは問題に思わない

 

4.  明け方の焔:崎本 智(6)

合評:しろくま、常磐 誠、小野寺 那仁、神崎 裕子、緑川、イコ、あんな、る

 

4.1 手法について

イコ:ギリシャ・ローマ神話ではなく、日本神話を使ったのはおもしろい。ただ、神話を使えば話が深まるだろうという作者の魂胆が見え透いている。文学らしい文学が書きたくて、「文学」のための文学を書いたようだ

あんな:漱石の影響を受けたのでは

 ←小野寺:古井由吉の短編「水」「櫛の火」に似ている。ちょっとメルヘンな妻をいたわる夫、人物よりも火や水を描く姿勢、そして神話的イメージ

 ←イコ:辻原登にも文体が似ていた

 ←小野寺:主人公が働いていないのが漱石や古井に似ている要因

  ←しろくま:山の中の生活で、高等遊民を描いているようには思えなかった

小野寺:たき火のくだりは文学的装飾であってもおもしろかった

る:トラックお光の描写が圧巻だった。それを登場人物の情緒にも活かしてほしい

 ←緑川:描写については自分も評価したい。文章そのものへの姿勢に好感が持てる

イコ:先行作品からの影響が如実に出るのではなく、自分の作品にしっかり落とし込んでほしい

 

4.2 「愉快」について

る:作中にあった「泣きたくなるほど愉快な気持ちで」が最後まで分からなかった

 ←あんな:衝撃のように突然絶望を感じたとき、自分は愉快だと思う

  ←イコ:主人公が衝撃を感じているようには思えない。この主人公には感情の起伏がない。妻の失踪も、その準備が整っていたようだ

 

4.3 主人公たちの生活について

しろくま:「リセット」のリセット制度と同じで、主人公が何をして働いているのかなどは考えなくていいのでは

 ←イコ:考えずに読めたかどうかが問題

  ←あんな、る、神崎:考えなかった

  ←しろくま:小さな畑を持っているような自給自足のイメージ

緑川:働くことやどうやって食べるかなど、そういった問題が前提とされていない家庭のように思った

 ←イコ:現実から切り離された幻想空間の小説として読むべきでは

  ←小野寺:叔母は金について言及している。叔母だけは社会性があるように思う

イコ:文学的な世界として読むしかなかった

緑川、常磐:社会的な面のあった祖母が途中から出てこなくなる

 ←る:確かに叔母は宙ぶらりんだった

 ←小野寺:叔母がいなかったら妻が出ていく理由が希薄になるので、叔母を使ったのだと思う

 ←イコ:叔母を出すことでバックグラウンドが明らかになる

 ←緑川:叔母の登場する理由、必然性はあるけれど中途半端だった

神崎:叔母は陰気さの象徴だった

 

4.4 6さんの妻の冒険を書きたいという発言について

イコ、小野寺:この発言は余計だった

イコ:星生に注目していた。登場人物全員を、人生を背後に忍ばせた得体の知れない人間として描けばぐっとおもしろくなる

常磐:話の中心を妻でなく星生を中心にしたままでよかった。注目していた

あんな:この妻が冒険に出たとは思いにくい。里に帰ったはず。

しろくま、イコ:解放された妻は自分のやりたいことのほうへ出かけたイメージ

小野寺:田舎の生活に都会の子が耐えられず帰ったとも読める

 

4.5 残された星生の今後の生活はどうなるか

常磐:妻に未練を持ち続けていそうだ

小野寺:神話を題材にしているからまた繰り返しそうだ

 

4.6 後半の描写について

イコ:後半にも叔父、父、叔母が出てきてほしかった

小野寺:叔母は出てきてほしい

緑川:一般社会とほとんど切れていても、家族・親族も小社会

 ←しろくま:家族が登場しなくなることで、完全に社会から離れてしまったことの表現にもなっているのでは

  ←常磐:離れてしまったと言い切るのは難しい。離れたい、ではあっても

 

5.  いざ起て戦人よ:小野寺 那仁

合評:しろくま、常磐 誠、小野寺 那仁、神崎 裕子、緑川、イコ、あんな、る

 

5.1 題名について

しろくま:題名の「戦人」とは主人公若者たちのことを指していると思ったか

イコ、常磐、あんな、る:そこまで考えなかった

 ←イコ:「戦人」とは「この世の罪悪と戦う人」という意味らしい

 

5.2 文体について

る:たどたどしかった

 ←神崎:わざとかと考えた

しろくま:喧嘩の描写が分かりづらかった。主人公がひどく冷静。外から見ているような描写が一役かっているように思う

 ←る:事実の伝達だけの文体だった

緑川:書き急いでいる感がある

あんな:展開や人物の登場や唐突だった

 

5.3 小説の長さについて

イコ:200枚くらいの内容を20枚にまとめたようだ。もっと色々思わせてほしい

緑川:ネット小説をもっとエピソードを詰め込もうよと思うことがあるが、この作品では逆だった

常磐:同じく途中で終わった感を覚えた。そしてエピソードをダイエットさせてほしいと思った

しろくま:この後も続くという意味で短く感じた。卒業式まで続きそう

 

5.4 合唱について

緑川:合唱を通してまとまっていくというのはありそうだが、それに止まらない要素が多かった。それには不必要な要素が多い

イコ:結局合唱はなんだったのだろうという感じだった。各自で練習していたしまとまったように見えない

 

6.5 青春小説

イコ、あんな:王道の青春小説の要素をばらばらにくっつけた印象

あんな:「付き合って」「ううん」の流れがすごくシンプル

緑川:その次のシーンにはクラシックギターを抱えている。どう繋がるのかと思った

イコ:登場人物に思想がない。それが書けるというのはある意味すごい。学校でアウトローを気取るには思想が必要だと思う

あんな:アウトローなのにすごく素直

 ←しろくま:この学生たちはアウトローではないと思う。少しクールなだけ。アウトローにまでなれる強さを持っているようには思えない

 

5.6 作品の年代

イコ:随所に昭和の香りがした

緑川:昔と読んだ

しろくま:きわめて現代の作品と読んだ

イコ:比喩がまずい。現代の子に「待女」はおかしい

しろくま:いまの高校生は以前より元気がないと思う。それが作中の子たちと合っていた。

 ←緑川:底辺の学校とハイソな学校で全然違う

神崎:いまの高校生はとても暴力的だと思う。攻撃の手段がネットになって陰湿化しているように思う

常磐:肉体攻撃がなくなって、その分精神攻撃に変わってきている

イコ:前半の肉体的描写がこの作品を現代的に感じさせない

 

3日目

6. 目覚め:緑川

合評:しろくま、神崎 裕子、イコ、小野寺 那仁、常磐 誠、あんな、甲斐 寛樹、だいぽむ、緑川、小山内 豊、る

6.1 二人称について
しろくま:二人称の作品は初めてだったが他の人は読んだことがあるのか
 ←あんな、小野寺、神崎:あったと思う
 ←常磐:恐らくはじめて。書くこともできなかった
 ←だいぽむ:これは本当に二人称なのだろうか。最後の私の一人称では
  ←甲斐:自分も一人称だと思った
だいぽむ:「君」は作中の幽霊である「私」の呼びかけにすぎなくて作者が読者に呼びかけるような二人称とは違う

6.2 エンタメか純文学か
小山内:この作品がエンタメだとしたら話を膨らませてドラマを盛り込む余地がある。必ずしもどちらかである必要はないと思うが
 ←る:特に位置づけて読むことはしない
 ←神崎:エンタメか純文学かの区分に意味はない。どちらにしても中途半端だった
  ←小山内:位置づけというのはこの作品においては問題にするべき。深読みの指標になる
   ←しろくま:小山内と同意見。純文学として考えるのかと思うところもあったが、そう読んでも答えは分からなかった。よってエンタメと読むべきと思った

6.3 作品について
小山内:ギミックしかないと思う
小野寺:「作者にそんなものがあるかって? まあ、自分で考えなさい」という部分がよくわからなかった
あんな:「私」が誰なのか謎なまま読んでいったので部分的な印象は薄い。ラストありきという感じも
甲斐:この作品は最後の一文が全てで、あとは飾り。より良く飾るために霊的な視線で客を見てみた、ということだと思う
る:もっと客を見ていて楽しめるように書いてほしかった
常磐:作者の「異形の者」と比較すると考えながら読むことが少なかった
あんな:「異形の者」しか読んだことがなく、このような小説も書くのかというのがおもしろかった
る:「君」と呼びかけるからには共感が必要。「冬の夜一人旅人が」では書き出しから「あなた」と読者の自分が同期する
小山内:奥行きがあるようには読めなかった。それが用意されていたとしても希薄なんじゃないのだろうか
 ←イコ:「異形の者」より奥行きは感じた。軽い読み物ではなく「私」の精神の流れを詳らかにする小説だと感じた。「目覚め」とは労働に自我を摩耗させた三十男が徐々に精神を研ぎ澄ませていく小説だ。幽霊を見たことが他者を理解したということを表している、この男は近い将来スーパーをやめるのでは。
 ←あんな:スーパーの幽霊の部分は自分の意識だが、最後、自分という存在自体を客観的に見ると読んだ
  ←だいぽむ:家族・血縁者の守護霊であるという連想が強すぎる

 

7. 劣情に惑う剣:常磐 誠

7.1 作品について
しろくま:悪い意味でネット小説という感想
る:日本語がよくない。誰が何をしているのか状況が一発で入ってこない
小野寺:楽しく読めた
緑川:主人公の心理説明に多く書かれているが、それを簡潔にして「絵」を見せてほしかった
あんな:「ないものねだりが死ぬその日まで」は一人称がはまっていると感じたが、今回は少し物語と距離を置いてほしかった
カエデ:何度か読み直して状況を理解するのに苦労した。あまりラノベを読んだことがないのでイメージだけだがラノベ的だなあというのが一番最初の感想
だいぽむ:ステレオタイプが多く既視感がすごかった。少女漫画に出てくる男たちのよう。会話のリアリティもない。揃いも揃ってくさい
 ←イコ:その既視感こそこの小説の魅力では
 ←小野寺:作者が少女漫画的な小説をめざしているのならこれでいいのでは
  ←小山内:ステレオタイプでもいいと思う。しかしこの主人公には魅力がない
イコ:ひどいラノベを読むくらいならこの作者の作品を読む。それくらいの文章力はあった
あんな:文章自体には魅力があると思う。この文章でもっと内面をえぐるような作品を書いたらよい作品が生まれると思う
小山内:もっと主人公の前に説得力のある困難を据えたらいいのでは。ライバル、宗教、金銭的なことでも

7.2 ラノベ
カエデ:この作品はラノベということでいいのか
 ←イコ:かなりラノベによっているが、作者はもっと上の年齢層にも読めるものにしたいと語っていたと思う
甲斐:主人公のキャラが薄い
 ←イコ:ラノベの主人公はキャラが薄い。読者が自己投影できようにしているのだと思う

7.3 劣情について
イコ:この作品では「劣情」を表現したかったはず。内面を掘り下げようとする意図があったはず。しかしそれが表面的なところでとどまっていて「既視感」という言葉で片付けられている
 ←神崎:定型文であることもその要因では
緑川:劣情を主人公が感じるのなら分かるが、作者がタイトルにする言葉ではないのでは


7.4 登場人物「香織」について
あんな:香織との関わりがもっとあってもよかったのでは。自殺指南書のところがあまりにも軽い
イコ:二十枚という紙幅を気にして作品が駆け足になっている。だから香織との関わりが書けていない
 ←神崎:枚数が足りないという感覚は今回の短編競作の作品全体であった

7.5 成長
イコ:いいと思うラノベは青春のドタバタした様子をとにかく全力で読ませてくれる。ドラバタの繰り返しの中に成長がある。この作品では成長に説得力が足りない。必要ないところを減らせばそこに積み重ねる様子を書くことができる
 ←あんな:成長までの積み重ねがないから最後ぐっとこなかったのかもしれない
 ←しろくま:成長を描くための場面の数はちょうどよかったのでは。二十枚という枚数的に不必要な文を減らしても、場面の数はあれ以上は無理だと思う
イコ:踏み出せない読者に対して、踏み出せる主人公。だから読者が願望の世界を味わえるという構造

 

4日目

8. オレンジの巣:あんな

合評:しろくま、小野寺 那仁、あんな、イコ、常磐 誠、る、小山内 豊、緑川

 

8.1 オレンジの巣について

しろくま:オレンジの巣はなんだったのだろうか

 ←イコ、常磐:子宮

小野寺:オレンジというのは斬新だと思う

 ←イコ:オレンジと言われると女性の身体の内部が思い浮かぶ。赤、青、白、黒でなく、オレンジなのがいいと思った

小山内:子宮というより卵巣だと思った

 

8.2 詩

小野寺:自分のミクシィ関係の知人などで言えば、詩というと、えげつないものが多く、評価されていても積極的に好感を持てなかった。しかしこの作品は自己主張がそれほど強烈に思わなかった

イコ:読み終わって残るイメージがなかった

小野寺:使っている言葉は動的で激しい言葉が多いが、全体としては静かな印象を覚える

イコ:今回の「短編競作」の中で出されたのでこの書き方は意外に感じたが、詩として出されたら普通に納得できる。そして首をかしげる。詩ならもっと言葉の一つひとつを異化させるべき。短編でこの書き方は意味があるのかと疑問に思う

 

8.3 双子

イコ:30日経って、ただ機械みたいに生産するだけ、認めてもらえない、とてうのは月経のことなんだろうと思う。30年閉経するまで

 ←小野寺:その中の一つが生命になるということ

しろくま:会話の中にある「宇宙」とはなんだろうか

 ←小野寺:この会話があるから、双子なのだろうかと思った

 

8.4 「乳と卵」

イコ:川上未映子のイメージに近い

 ←小山内:自分も読んだが影響というほどではないと思う

  ←イコ:初期の川上未映子の文章の、前のめり節がこの作品に反映されている気がして、それがイメージを結びつけたのかもしれない

 

8.5 どこにおもしろさを感じたか

イコ:みんなわからないと言いつつ、おもしろいと言う人もいるが、そういう人はどこにおもしろさを感じたのか

 ←しろくま:言葉選びとイメージでは。自分はそうだ

 

9. 親子の敗走:だいぽむ

合評:しろくま、小野寺 那仁、あんな、イコ、常磐 誠、る、小山内 豊、緑川

 

9.1 「親子の敗走」をよかったと思うか、よくなかったと思うか

小山内:不快だった。作者が何を言いたいのか分からなかった。完成度は高いけれどそれゆえに内容的に突っ込まれやすいと思う

る:グランプリをあげるならこの作品

あんな:感想で良いと書いた

イコ:みんな絶賛していることに疑問に感じた

緑川:きっちりした文章でしっかり話作りもできている。ただこの作品は洋太が主人公ではなく語り手が主人公のように思える

 ←る:そこがよいところでは

小山内:創作として文章がきっちりしているのは、作家志望者として評価できるけど、本当に重視すべきは内容の価値にある。この作品は単に貧乏の負けっぷりを書いているだけ。本質的に評価できない

 ←小野寺:貧乏も書けていないと思う。貧乏とは父の台詞からしか感受できない

 ←る:内容なんてどうでもいい、まともに読める文章で書けている

小野寺:獅子のロボットとはなんだろう。獅子という言葉から換気されるのは獅子舞しかない

小山内:この世界観を書いてみようという観点から、この作品がどの程度現代性を取り入れ、表現としても新しいかということを考えたとき、一歩も進んでいないのではないのだろうか。最近の創作の姿を劣化コピーの群れと批判した人がいたが、そのそしりを免れていないと思う

小山内:客観小説として成功しているようにみえるのは洋太があまりに単純な子供だから

イコ:共感しているけど作者は笑っている

 

9.2 常套句

小野寺:「待ってましたとばかりに」「苦虫を噛み潰すような」「てこでも動かぬ」「欲求がいや上にも高まる」「頑是ない」……ちょっとあげただけでもこんなに常套句がある。これは手垢のついた表現だと思う

 ←イコ:21世紀の小説では少なくなった言葉遣い

 ←しろくま:そういうのがなかなか使えないから素直に上手だと感じた

 ←る:あえてそういった常套句を使っている。子供の主人公に饒舌すぎる語り、このコントラストがこの作品のおもしろさ

  ←小野寺:仮にあえて使っているとしても、それなら昔の小説を読んだ方がいいということになる

 

9.3 M

緑川:なぜ友人は名前ではなくMなのか

イコ:金持ちの一人として書いている。記号化すると個別化から免れる

小野寺:悪しきプロ文の影響と思う

緑川:語り手がもっと洋太に寄り添ってくると友人の名前も出てくるのでは

しろくま:金持ちそうな、たとえば伊集院という名字でも付けたら、またおもしろかったかもしれない

 

9.4 分量

あんな:読ませる力は凄いと思う。今回の中では一番短編の長さがしっくりきた作品だった。一番すらすら読めた

しろくま:同じ長さでも、体感する長さはこの作品が一番長く感じた

小野寺:一番読みやすかった

イコ:読みやすかった

 

9.5 人を立ち止まらせるには

小山内:「親子の敗走」が人を立ち止まらせる力を持つには、たとえばどうした工夫が考えられるだろうか

 ←しろくま:シリアスに書けばいいのでは

 ←小野寺:クラスの皆が平然とトロばかり食べているとか、金持ちをたくさん登場させる

イコ:映像じゃないイメージが浮かんでこればよかった。音や匂いがほとんど書かれていない

しろくま:映像、意図、思想がはっきり見えすぎているように思う。それよりはもう少し言葉下手な作品のほうが色々考えさせてくれるのかもしれない

 

9.6 父親が洋太の手を叩く場面

る:今回一番詩的だと思った。情緒がある。一つの行動に複数の意味がある

緑川:頭で考えていない、計算していない行動

小野寺:職人というのは言葉よりも行動に出やすいために違和感なかった

イコ:あの行動で一瞬空間が止まる。流れを止める、「あっ」と思わせるいい表現だと思う


10. 出来そこないのマリア:る

合評:しろくま、小野寺 那仁、あんな、イコ、常磐 誠、る、小山内 豊、緑川、神崎 裕子

 

10.1 物語

しろくま:普段は詩を多く書く作者の小説だったが、言葉に凝ることより物語に重点を置かれていることが意外であり好印象だった

あんな:もっと凝った作品が来ると思っていたら意外とストレートだったので好感を持った

 

10.2 1章目

小野寺:ここの文章には感情が流れていない。煙草に必要以上に付加をしているように思う

あんな:そんなに最悪とは思わなかった。比喩は微妙だが

 

10.3 モチーフ

小山内:舞台に拳銃が出れば、お話のなかで発砲される事件がおきるという、いわゆるモチーフ消化という視点で見たとき、人物や、薬物・音楽にしても扱いがつかめなかった。それぞれ悪ぶりたくてぱっとでたような印象を受けた。

イコ:ロック、セックス、ドラッグ……『限りなく透明に近いブルー』でもあったが使い古された悪タレの道具

小野寺:1の部分は彼女との出会い、俺の説明だが、それぞれ分けて書いた方がいいと思う

しろくま:モチーフが主人公たちの生活に溶け込んでいるように書いているけど、出てきただけで溶けきれていない

 

10.4 切実さ

あんな:深いところまで読まず、ただ楽しんだという印象。でも全体的に見ると切実さはある気がする。そこまで道化とは思わない

しろくま:彼女に殺されたのが自分だったらよかったのに、というところに切実さを感じた

小野寺:血や赤と書いてあるがあまり伝わってこなかった

イコ:ただ楽しむことはできた。切実さは感じなかった。いらいらしただけ

 

10.5 ケータイ小説に感じたか

常磐:あまり感じなかった。web小説ならあるかもしれないがケータイ小説と呼ぶには次元が違うように思う

あんな:最初からそのように読んでいない

緑川:改行が少ないから違う

小山内:感情移入を感じさせるせいか、かなり直情的、短絡的なところがあるのでケータイ小説のように感じた。モチーフの一つ一つを印象のみで扱い、踏み込んでいかないところは少なくともそうしたケータイ小説的なところがあるのかと思う

 ←小野寺:小山内さんは文学である以上は世界観や思想を単なる感情・情緒から立ち上がらせたいと考えているのだと思う

イコ:ラノベというよりは確かにケータイ小説