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「ディスタンスノミズ」(他二篇):蜜江田初朗

ディスタンスノミズ

 

ほとんど永遠に近い煌めき、それが天使からの贈り物ですよと告げられたら、

まるで厳かに受け取ろうとするでしょう。

 

切ない音楽の中に無数の粒子が流れている。

 真ん中を軽やかに一本の水流がはしっている。透明な水流。

命の水とは別なのです。別の、世界の構成にかかわる水。

 

それは例えば人間と動物でもいいし、

死者と生きる者たちでもいいし、男と女でもいいし、

とにかくあなたは水流の手前に立っていて、

あの人は水流の奥に立っている。

 

最後の距離を抱えて生きるとは、
なかなか埋め尽くすことのできない、

〈二〉が〈一〉になれないその間の距離のことを、

つまり水流を軸にしてこことあそこを分けなさい、という意味なのです。

 

その水はもしかしたら、命を飛躍させるための、

悦びへと接続させるための、そんな源なのかもしれない。

例えば私は死んだおじいちゃんが遺した一冊の本を手に取る、

それをきっかけとして、死んだおじいちゃんとの対話は回復されるかもしれない。

 

この水流の立場を壊してもいい、

なんて思える人は、生涯の中でたった一人か二人。

その時には〈私〉は瓦解し、

考えもしなかったことが起こるのでしょう、あなたの身に。

 

 

 

 

nowhere

 

焼けただれていく、皮膚が、

 

紅く、紅く引き裂かれていく。

 

熱さの中で鉄の屑が死ぬ。

白いマグカップをテーブルに置いたら、

地が響き渡り、

声が震え、

形という形は壊れ、

 

すぐにすぐにすぐにすぐに

 

最たるものとして戯れの中に没する。

 

間違いとは何だったか

アンニュイとは何だったか

なんでもなんでも分からなくなって、

放置されて、

不毛になって、

塵と化して、

 

そして______________________

 

 

 

茶色の光景

 

茶色の光景が見えたんです。

それは、よくできた焼き物のようであり、漆喰で塗り固められた、

ところどころ褶曲もあって、波打つような力強さを感じさせる。

でもそれだけなんです。

意味とか、エネルギーとか、

実はそんなものはひとつも無く、

それはどこまでも

無味乾燥なものであった。

 

茶色の光景は

おそらく人の心にすっと侵入し

あらかた

全てを食いつくすかのように

悲しいものや虚しいものを

思い出させる。

 

茶色の光景が見えたら

あなたのその生にも陰りが見えて、

僕らは、

僕らは漸く終わりを見る。