美しい指をもつ人たちから
零れおちたカスタネットを
帰巣本能をわすれた鳥たちが
頑なに鳴らし続ける街
アルコールが全ての男たちの母となり
街路灯に浮かびあがる
娼婦たちの微笑がぬかるみ
月は冥府の口元に似て
歪な歌を口遊んでいる
そうして羽を持たない歌が
射し染める光のなかで
ポロネーズの最初の一節を叩く指のように
おろかに逃げ惑い
捨てられた子犬に
やさしい音色として響いた
羽を持たない全ての生き物は眠る
かなしさとやさしさをないまぜにして
ベッドの上で蒼褪めたままの少女は
鍵穴から聞こえた悲鳴を
身体に篭る冷たさに奏ねる
鉄塔に羽を休める鳥たちは
嘲る月の光を啄ばみ
また次々と小さい天蓋へと飛び立ち
オルゴールのネジを回し続ける
羽を持たない全ての生き物は眠る
あらゆる間違いを眠りながら
風に触れようとする指先に
二つの心根を赦して