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地図(Pさん)

 何でもグーグルマップより頻繁に更新する、市街の新築や建て直しを即時に反映させるインターネット上の地図アプリがあるそうじゃないか。隣家の蔦がこちらまで這い寄ってきているので、これはもう堪らないと、まるでそれが導火線であったかのように憎悪に火が点いて、築七年の家を家族で飛び出したというその空き地が見える。隣家は三方むき出したことのない漆喰の薄汚れた壁を見せて、彼らが気にしていた北側の家の蔦はこう見るとそれほどでもなく、空き地にはすでにヒメジョオンが人の背丈も超えるかというくらい生長していて、夕方に蝙蝠が飛び交うだかしかしそこはちょっと前に家があったのを自分は全く見ていなかったのか? こうしてアプリの画面で確認するまで、取り壊しや(この家と自分の家は思いのほか近い)瓦礫の取り除きや、黄色と黒の張り巡らされた杭とビニール紐や何かを、今まで実際に自分の目で確認していなかったというのが信じられない。何でもこの画像は最近建てられた高層建築物の頂上からの高解像度パノラマ展望カメラを元にして構成されているそうだ。西の空は晴れて、東の空は暗雲垂れ込め雷が轟く異次元めいた昨日の空模様が今日反映されているというのは、ハンドメイドならではのフットワークの軽さだ。こういう市民的努力が大企業のサービスを超えるのを見ると胸がすくような思いだが、近々これも買収されてしまうようだ。だから、祭り状態になって頻繁にサーバーダウンしているこのサイトを見納めと思って眺めているわけだが、それにしても自分の観察眼の不確かさ、隣家の言い争いの声を内容まで把握しながら聞いていたにもかかわらずその現場を目にしていないという浅はかさ、思慮足らず、堅忍不抜さを恨む思いが急にわき上がってくる。こんな状態では、私の通っていた小学校が、市町村合併による廃校や統合ですでになくなっていた、なんてこともあるいはあり得るのではないか、そう思って今度はその方を見てみるとそんなことはなかった。グーグルストリートビューも結局は道路上で撮影した幾枚かの写真の組み合わせでしかなく、そのあいだを粗雑な、疾走感をいっさい生み出さないズームが埋め合わせている様をあなた方は見たことがあるだろうか? 小学校の廊下はさすがにリノリウムのままではなく新素材を使っていて、天井のアスベストもクリーンな新素材に差し変わっていたがそれ以外は何の変化もなかった。校舎から体育館に向けて渡されているコンクリート打ちっ放しの通路と屋根。ここに実際に入るわけには行かないが家に居ながらにして見られるという現代の技術に感服する。

(中断)

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コメント: 1
  • #1

    シロクマ (金曜日, 11 7月 2014 09:48)

    まず築七年というまだまだ新しい家がなぜ取り壊されたのか。書き手が知らぬ間にと言っていて、蝙蝠の巣になっているところから、不思議な力なのか。
    自分の持つ「空き地」のイメージと違う。
    カーナビとGoogleが提携して、随時地図が更新されるようになって、その地図の写真も画面じゃなくて車窓の内側に映せるようになってしまえば。地図はいつしか移動するための道具じゃなくなる。
    先のよりは読みやすかった。続きで空き地の秘密も分かるのか。